一期一会

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「市塵」読み終えました

昨年5月に父が亡くなった時に、父が長年住んでいた山小屋のような小さな家を訪れました。

大学を退職してからは石狩湾を一望できる居間でタバコをくゆらせながら読書三昧の父でしたので、かなりの蔵書が壁をうずめていました。

父は役に立つ本があればどこかに寄贈するなり、古書店などに買い取ってもらうように言い残していったのですが、なかなかそれは実現不可能でした。

今は本は使い捨ての時代になってしまったようです。 

私も本棚を覗いてほんの少しだけもらってきました。


藤沢 周平の作品が主です。
その中の「市塵」を読み終えました。  本s

江戸時代の儒学者、新井 白石の足跡をたどり、その老境を書いたものです。

その昔日本史を習ったときに出てきた新井 白石という名前は記憶していますが、その後はそういう人もいたという認識くらいで、実際の業績等も知らずにすごしていました。

今回「市塵」を読み、久しぶりになんと読み応えのある、そして心に残る作品だろうと感激しました。

江戸中期、甲府藩主 徳川綱豊に仕えた白石がやがてその藩主が将軍家宣となることにより、周辺が変化し、白石の立場もただの儒学者から政治顧問という重要な立場に立たされることになる。その後綱豊の死により権力の座から次第に遠ざけられ老境に入っていく白石。

と、テーマはこういったところですが、その白石の心の変化が藤沢 周平ならではの繊細なタッチで綴られています。

父はこの作品を2度読んだらしく、最後にその年月日が鉛筆で記されていました。
一回目は1997年3月、二回目は2000年7月。85歳の時にはどんな感想を持ったのでしょうか?
3年後にまた読み返しているところをみるとよほど心に残る作品だったろうと思いました。

特に文中に白石が病身だった三男を喪ったときに作った詩に傍線が引いてあり、父は何を思いながら線を引いたのだろうとちょっとグッときました。

  何ぞ堪へん今夜の景(ひかり) 去年の晴に似ざるを
  天は中秋に到りて暗く 人は子夏の明に同じ
  交遊は旧態を空しうし 衰老 尚余生あり
  雲雨 手を翻すが如きも 世情の情に関わる非し

息子を悼みつつ疎遠になった人々を見つめる詩の、特に「衰老 尚余生あり」という箇所に強く傍線が引いてあるのを見たとき、思わずじんわりと涙腺がゆるんでしまいました。

藤沢 周平という人の作品は年を取ってから読んでこそ、その良さがわかるし、その年代に何度も読み直して心を震わせることのできるすばらしいものだと感じました。


Comment

ピメントさん 

いつも美味しいものをいただきありがとうございます。

ピメントさんは読書家ですね~
PC遊びをするようになって、本をじっくり読む時間がなくなったと思います。
もとからそんなに読書家でもありませんでしたが・・・(^_-)-☆

藤沢周平は1冊も読んだことがありません。
でも映画やドラマ化されたものは、けっこう見ているかもしれません。
NHKの時代劇シリーズに登場するので、これは好きでよく見ています。


  • posted by クリス 
  • URL 
  • 2010.06/10 17:33分 
  • [Edit]

クリスさん、こちらこそありがとうございます。 

色々とお心配り恐れいります。

ところで、私は読書家というほど本は読んでいませんが、活字中毒であることは確かです。
常に字を見ていないと落ち着かないという困った性格は多分父譲りなのでしょう。

その父が鉛筆で傍線まで引きながら読んだ本を、その死後に
自分が読んでいるというのも何か感慨深いものがあります。

藤沢周平の作品はどれも描写力がすぐれ、また作者の深い教養も感じられる素晴らしい作品ばかりです。
まずは「蝉しぐれ」あたりから入ったらどうでしょうか?

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